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中庭に足を踏み込むと、聞こえた声にパッと笑顔を浮かべる。
「パウル!」
その人の傍に駆け寄り、むぎゅっ、と抱きついた。
「おはようございます。坊っちゃん」
「おはよー!」
優しい笑顔で頭を撫でてくれるダンディーなおじいさま。庭師のパウルである。
年齢は60過ぎであるにも関わらず、そうは見えないほど若々しい。
俺もこんな優しいおじいさまになりたいと思ってます。
「ところで、さきほどお嫁さんがどうとか?」
「あー、うん」
老人にしては、たくましい筋肉がついているパウルに引っ付いたまま、頷く。
相変わらず、いいなー。
この年齢でこんなに筋肉ついてるなんて。
「それだったら、うちのエリノアなんてどうです? 不器用だが、優しい子ですよ」
「ふへっ?」
ビクッと跳ね上がり、そろそろとパウルから体を離しながら、何気に目も泳がせる。
実は、このパウルは、エリノアちゃんのおじいさまなのです。
そして、元騎士だったとか。だから、素敵な筋肉をお持ちなんだ。こう、適度なスタイルで――。
ゴホン、話が脱線しそうだったね。
「えーっと、エリノアちゃんは妹でいてほしいなー、なんて」
「そうですか……残念ですねぇ」
本当に残念そうに肩を落とすパウルに申し訳ない気持ちになるが、俺も色んな意味で命が惜しいので、エリノアちゃんをお嫁さんにするのはお断りしたいです。ごめんなさい。
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