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「…………」
「…………」
あ、もしかして、聞いちゃいけないことだったかな。どうしよ。おじいさまの沈黙が怖いんですけど。
「いえ、別に構わんのですが」
「え……もしや」
「顔に出ておりましたよ」
「やっぱり……」
そんなに分かりやすいんだ……。
しょんぼりしちゃうんだからね!
……うん、俺キモいな。
まぁ、それはともかく、話の続きを聞こうか。
「あれは確か、坊っちゃんがお生まれになって少し。2歳ぐらいの時ですかねぇ。私と坊っちゃんは中庭で遊んでいたのです」
「んー、覚えてないなぁ」
「本当にお小さかったから、覚えていなくて当然ですよ」
ジョウロの水がなくなると、俺を促し近くのベンチに一緒に座った。
「当時の庭師はとても腕が良く、小さな坊っちゃんも中庭が大好きでした」
「へぇ……」
「しかし、当時の庭師が亡くなると、この場所は荒れ果ててしまいましてねぇ。坊っちゃんは悲しんでおられました」
荒れ果てた中庭かぁ……。今の綺麗な中庭がなくなったら、想像しただけで悲しいな。
「適任な庭師もいなかったので、このじいが一肌脱ぐことにしたのです」
「おぉ!」
パウルが脱いじゃったの!? 10年以上前だから、50代だよね! うあああ、おじさまの体とかあああ!
あ……そういう意味じゃない? 分かってますとも。
「騎士を続けるのも大変でしたので、いい機会だと思い、庭師に転身したというわけです」
「そっか」
でも、庭師が生きていたら、パウルは騎士を育てる側にいたと思うな。
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