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エリノアちゃんに絆創膏を渡すと、涙目でお礼を言われた。
「すみません、王子……」
「気にしないで。っていうか、痛いよね」
「大丈夫です! 慣れちゃってますから!」
えへへ、と照れたように笑うエリノアちゃんだが、それって結構問題あると思うよ。
痛いのに慣れないで。お願いするから。
「申し訳ありません、坊っちゃん。……エリノア、メイドとしてもう少し落ち着きを持ちなさい」
「ごめんなさい、おじいちゃん」
「あー、あんまり怒らないであげて。エリノアは頑張り過ぎなだけなんだから」
パウルは、時に厳しいことも言うが、基本優しいおじいさま。彼女が一生懸命なだけということは一番理解している。
「えぇ、その通りです。ですが、教えられることは覚えてもらわなければ。 エリノアはやれば出来る子です」
「うんうん。エリノアちゃんはやれば出来る子だよね」
「が、頑張ります!」
ドジっ子だが、物覚えは早い。その証拠に頭は良く、勉強は得意だとか。
まぁ、それを上回るドジのせいで全く役立つことがないみたいだけど。
「……さぁ、仕事に戻りましょうかねぇ」
「あっ、そうだった! すみません、私、先に失礼しますねっ」
「うん、また後でねー」
バタバタと嵐のように仕事に戻って行くエリノアちゃんを、手を振って見送った。
「落ち着きがない子ですねぇ」
そう言いつつも、パウルは微笑んでいた。
「では、坊っちゃん。またお話ししましょうね」
「うん」
俺は、去って行くパウルの後ろ姿を見つめて思う。
二度寝出来なくなった。
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