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「……それで、やるの?」
「ん?」
滲んでいた涙を拭いてから尋ねると、カイは首を傾げた。
「ヨハンさんが言ってたでしょ? ヤらないか、って」
「悪い、なんか意味違うと思う」
「えー、違うのー?」
兄×弟でおいしいのに……。
俺は残念……と眉を下げ、まだ潤んでいた目でカイを見つめる。
すると、サッと目を逸らされた。何故だ。
「うっ……」
「カイ?」
「な、なんでもない」
涙目だったから、キモくて引いたのか。
ちょっと悲しいですが、仕方ない。
「よく分からないけど、剣の訓練やろうか」
「お……はい」
「ベル王子は、離れた場所で」
「うん」
ぽん、とヨハンさんに頭を撫でられた後、訓練所の隅っこで見学しているように言われたので頷く。
みんなが俺の頭を撫でていくのは、何でだろう。子供扱いされてるのかなぁ?
カイと目が合わないまま、俺は隅っこにある木の下に座った。
カイ達以外の騎士達も、二人の勝負が気になるのか、遠くで見守っている。
それも当然。
騎士隊長の兄と、正規の騎士よりも実力は上である騎士見習いの弟の勝負。
どちらが上でどちらが下なのか。
「(……どっちが攻めで受けなのか)」
……気になるよねー!
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