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気がつけば、フォル先生の授業の時間になっていて、俺は机と向き合っていた。
どうやってここまで来たのか覚えてないが、多分、普通にカイ達と別れて来たんだと思う。
どうして胸が痛かったのか、分からないまま。
カイとヨハンさんの仲の良さに羨ましくなったのか。それとも、別の理由があるのか……。嫉妬以外で。ここ重要。
思い出すと、再びズキズキと胸が痛みだした。
もう一回言うけど、嫉妬じゃないからね?
そういうことで、勉強に集中出来ずにいた。それが、フォル先生にバレないわけなく。
「……王子? どうした?」
「あ……。いや、ちょっとボーッとしてただけ」
へへ、と俺が笑うと、心配してきたフォル先生は、俺の後頭部に手を置いて引き寄せ、額と額をごっつんと重ねた。ちょっと痛かったし。
「……いたい」
「風邪じゃないみたいだが……」
間近で見るフォル先生の瞳は綺麗で、吸い込まれそうなぐらい力があった。
その目に何もかも見透かされてしまいそうで、俺は目を伏せた。
「……そんな顔されると、苛めたくなるな」
「へ……ぁ」
チュッ、という音とともに頬に触れた柔らかい感触にビクッと震えるが、すぐにフォル先生から離れて睨み付けた。
キスされても、引っ掛からないんだからね!
「な、なに!?」
「おー、元気でたか?」
「からかうのは止めて下さいよ、先生」
ムッと膨れても、クスクス笑うフォル先生を見れば、力が抜けそうになる。
でも、余計なことは考えずに済んだから、感謝してあげるよ、先生。
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