3。

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――と、思ったのだが。 「んぅ……ん?」 「!」 唇が触れるまであと1センチのところ。 ベルの瞼が微かに震えて、薄く目を開けた。 俺の体は驚きで固まってしまい、目を覚ましたベルとバッチリ視線が合う。 「……カ、イ……」 「…………」 「近い」 「あ、悪い……」 寝起きの潤んだ瞳に見つめられると、俺は顔を真っ赤にして慌てて離れた。 「カイ……お前」 あんな距離だったし、さすがに気づかれたか? 内心、焦りまくっていたが、悟られないように笑顔を浮かべて、言葉の続きを待った。 「……お前、視力落ちたのか?」 「…………は?」 「あれ……違うの?」 ぼんやりと寝惚けた様子で、こてん、と首を傾げられる。 俺は、違う意味で体が動かなくなってしまった。 「顔、近かったから……見えなかったのかなって」 「…………」 これは……。 「あれ? っていうか、なんで膝枕?」 ゆっくり体を起こすと、俺に膝枕されている状況に首を傾げて、ベルは不思議そうに尋ねてきた。 やっぱりというか、なんというか。 「気にすんなよ。……ほら、これを渡しに来たんだ」 「あ、クッキー?」 簡単にラッピング済みのクッキーを渡すと、予想通り嬉しそうに笑ってくれた。 「ふふ。ありがと、カイ!」 「どういたしまして」 笑顔でクッキーを持ち、軽く上目遣いでお礼。 ……あぁ。俺らの王子様は、究極に鈍感で、どうしようもない無自覚なんだな、と改めて感じた瞬間だった。 .
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