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おやつタイムのため、俺達は木陰からベンチへ移動した。
俺はどこからともなく取り出した濡れタオルを、ベルに差し出した。
やっぱり、手はきちんと拭かないとな。
手を拭いたベルは、俺の作ったクッキーを美味しいと食べてくれていた。
「ん、おいしーよ」
「良かった」
だけど、しばらくして。
ベルに話しかけても、ほとんど上の空であることに気がついた。
「……ベル?」
「あ……、なに?」
「何か悩んでるのか? 相談、乗るぞ?」
「……ううん。大丈夫だから」
ベルは、困ったように笑った。
時折見せる、寂しいような泣きそうな表情に、目が離せなくなる。
深く聞くことが出来ない俺は、そっと頭を撫でてあげた。
「カイ?」
「元気、出せよなっ。俺、何も出来ねーけど」
「……あ、りがと」
頭を撫でられ、ベルはキョトンとした顔をしていたが、すぐに笑顔になってくれる。良かった……。
「カイは、そのままでいてくれればいいから。いつも通り笑ってて」
「分かった。でも、何かあったらすぐ言えよ?」
「……ありがとう、カイ」
「おう。……親友、だからな」
「うんっ。カイが親友で良かったよ」
“親友”という言葉を自分に言い聞かせるように口に出す。
そうしないと、この笑顔は見られなくなる気がするから。
でも、やっぱり俺は――。
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