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昼食を食べ終えた俺達は会計を済ませ、お姉さんに声をかけてから、店を出た。
「どこ行ってみようか」
「行ってみたい所はないのか?」
「本屋は行きたいけど、荷物が重くなるし、あとでいいよ」
「そっか」
色んな小説を買い漁るつもりだからね。帰りが楽しみだ……ふふ。
でも、どうしようか。
どんな店があるのか、詳しくは知らないからなー。
そう思っていると、黄緑色のこじんまりとした建物が目についた。
俺は、引き寄せられるように近づいて行く。
「……雑貨屋か?」
「そうみたい、だね」
後ろからついて来ていたカイが、俺の肩越しに店内を覗き込んだ。
どうやら、可愛らしい小物があるみたいなので、エリノアちゃんへのお土産に買っていこうかな。
「入ろっか」
「おう」
爽やかな笑顔付きの返事を聞いて、俺は店の扉を開けた。
「…………」
しかし、すぐに閉めた。
「ベル?」
店内を見ていないカイは、俺が扉を閉めたことに首を傾げた。うん、可愛い。
「カイ、違う店に行こう」
「なんでだよ?」
「いいから」
強引にカイの背中を押して、店から遠ざけようとした――が。
「お客さぁん?」
「ふぃっ!?」
ぴと、と肩を掴む手に俺は跳ね上がる。
そんな様子に気づいたカイが俺の背後を見た。
「どぉーこ行ーくの?」
「お――「ひっ、ぎゃあああっ!?」……っ」
昼中の町で、俺の悲鳴が木霊した。
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