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「ふひひ……。ボクのお店は、気に入ってくれたぁ?」
「…………」
「……えぇ、まぁ」
「それは良かったぁ」
ふひひ、と不気味な笑い声を上げる、全身真っ黒な少年か青年かも分からない男。
彼の問いかけに俺は首を縦に振るだけ。
その俺を見てカイは同じように肯定し、彼と会話する。
さっきから、この繰り返しである。
先程、可愛い雰囲気の雑貨屋を発見した。
だがしかし、扉を開けた先は可愛いものがいっぱいで楽しいところではなく、外観とは正反対のおどろおどろしい魔境だった。
二人で逃げようとしたが、今、目の前に座っている店長によって、それはかなわなかった。
それに、俺が思うことはただ一つ。
「(うぅ……帰りたい)」
俺は、店に入ってからずっとカイの服の裾をぎゅうっと掴んでいた。
店内は何故か薄暗く、売っている小物も不気味に光っている、ように見えた。
……正直に言おう。俺は、こういう暗いのとか不気味なものは苦手だ!
だって、怖いもん!!
エリクとどっちが怖いか聞かれると、こういうものの方が怖い。
父様と比べちゃうと、圧倒的に父様の方が怖いけど。むしろ、引くレベルだけど。
「ふひひ。君達、久しぶりのお客さんだからぁ、ボクのお気に入りを見せてあげるよぉ」
「えっ」
もしかしてお気に入りって、霊的な世界に繋がっちゃう腕輪とか、呪いの藁人形とか、変態を退治出来るお札とか!?
「ふひっ、そういうものもあるよぉ」
「……マジか」
変態が寄らないように出来るものが欲しいな。切実に。
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