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変態をどうにか出来るアイテムのことは、あとで聞くことにした。
だって、この人怖いもん。
黒いローブのフードを深く被っていて、顔が見えない。口元だけ見えてるのが余計怖い。
そんな人のお気に入りってなんだろうと、カイに引っ付いてドキドキしながら、様子を窺っていた。
「これだよぉ」
「…………」
「懐中時計か?」
店長の白くて長い指先を見て、つい受けか攻めか考えたけど、カイの声で飛び立とうとしていた意識が戻ってくる。ただいま。
白い手のひらの上のそれは、確かに綺麗な銀色の懐中時計。
「そうだよぉ? ふひひっ。とある貴族が亡くなる間際まで持っていた懐中時計なんだぁ」
「そんなものをどうやって……」
「それは秘密だよぉ? 金髪のお客さぁん。茶髪のお客さんのためにも、聞かない方がいいと思うなぁ。でも、どうしても聞きたいなら教えてあげるよぉ? これはねぇ……」
「い、言わなくていいっ! 話さないで!」
秘密と言いつつ、話そうとした店長をなんとか止める。こういうのは、聞かない方がいいと思う!
「そーお?」
ブンブンと勢いよく縦に首を振る。
すると、彼は少し残念そうにしながら、懐中時計をしまった。
「そういえばぁ、自己紹介がまだだったよねぇ? ボクはヘンゼルだよぉ」
「俺はカイ」
「……お、俺は……ベル」
「よろしくねぇ」
ふひひ、と相変わらずの笑い声を上げるヘンゼルにポツリと名前を言う。
名前を言って呪われたりしないかな、と変な心配をしていると。
「名前だけじゃあ、威力ないからしないよぉ?」
どうしよう。怖い。
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