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「じゃあ、そろそろ行こう?」
「え……あ、おう」
「もう行くのぉ?」
「うん、仕事の邪魔しちゃ悪いし! 俺達帰るね!」
「そーお? また来てねぇ? ふひひ」
「う……はい」
最後の気力を振り絞って、ヘンゼルに別れを告げ、カイの腕を引っ張って店を出ようとした。
「そうそう、お客さぁん」
「ふへっ?」
「帰り道には気を付けて。ナイトにちゃあんと守ってもらうんだよ?」
「あ、うん」
何故だか分からないけど、その言葉だけが妙に耳に残り、頷いた。
‐‐‐‐‐
綺麗な夕日が町を照らしている時間。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、残すところ本屋だけになった。
「ふふ腐……あとは本屋だけかぁ」
「なんか、笑い方がヘンゼルみたいになってるぞ?」
「うぇっ!?」
それは嫌だなーと思いながら、近くの本屋へ向かって歩いて行く。この町は意外と本屋が多くて助かるんだよね。
「あ、あそこだ!」
「待てよ、ベル!」
萌えがたくさん集まる場所である、本屋が近くなると、自然と駆け足になる。
――もうすぐという時だった。
口元に布を押しつけられる感覚と同時に、俺の意識はなくなった。
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