4。

9/40
前へ
/241ページ
次へ
カイside. 「ベル!? ……あんた、何者だ!」 「…………」 走って行くベルを追いかけるが、途中の薄暗い路地裏から怪しい男が現れた。 そして、ベルの背後から口元に布を押しつけると、気を失わさせて肩に担いだ。 あまりにも自然で、悪意や殺気がなく、反応に遅れそうになる。 「その人を離せ」 腰元の剣の柄を握りながら、相手の様子を窺う。 黒い髪に真っ黒なコートとサングラス。 ヘンゼルとはまた違った全身真っ黒な男だ。 「……貴様に用はない」 「な――っ、ぁぐ」 「…………ふん」 一瞬。 いつの間に移動したのか、腹部への重い一撃とともに男は目の前に現れた。 「ベ、ル……」 「城へ戻って、知らせるがいい」 「ちくしょ……っ」 あまりの衝撃に目眩が起きて、地面に倒れてしまう。 男に担がれているベルを見て、俺が助けないといけないのに、と強く思うものの、体は言うことを聞いてくれない。 瞼が重くなる中、ベルの方へ手を伸ばした。 その手が届くことなく、男は背を向けて去って行ってしまう。 ――……ベルっ! 無力な自分に悔しい気持ちでいっぱいになりながら、俺は気を失って目を閉じた。 .
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

627人が本棚に入れています
本棚に追加