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エリクside.
――時は遡り、ベルが城を出発してからのこと。
「本当は私も護衛として同伴する予定でしたのに……」
「俺だって、たまにはベルと一緒に遊びに行きたかったぞ!」
私と国王陛下は、今日も執務室で仕事をこなしていた。
カイだけでは心許ないから、護衛には私も一緒に行く予定だったのですがね。
「陛下は皆に顔を知られているのですから、お忍びにならないでしょう」
「ぶー、俺も変装すれば問題ないだろうが」
「変装されていてもバレますよ」
国王モードでも威圧感があって注目されやすいのに、変態溺愛モードでいれば、間違いなく目立ってしまうだろう。
陛下も王子を守りたいのなら、それぐらい分かっているはず。
「つまらん。城に可愛いベルが居ないのにやる気が出るわけがない」
「はぁ……」
先程からこの調子だ。
いい加減に黙って進めてくれないだろうか。
ペンが動いているだけでもマシなんでしょうが、書き進める速度が遅い。
このままでは、夜までに終わらないと思い、ため息を吐いた。
「――エリクさん」
「はい?」
陛下を脅そ――ゴホン。促そうと思った時、部屋の扉が叩かれ名前を呼ばれたので、返事をする。
一旦、仕事を中断して部屋の扉を開けると、そこに立っていたのは、騎士隊長のヨハンだった。
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