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「どうしたんですか?」
ヨハンの表情を見て、廊下で話すことではないようだと思えば、彼を執務室へ入れた。
どうやら、陛下もそのことに気づいたらしく、持っていたペンを置いて話を聞く態勢になった。
「……それで、なにかあったのですか?」
「少し、気になる動きがあったので」
「ほぉ。……というと?」
スッと目を細めた陛下が先を促す。
すると、ヨハンは静かに言葉を続けた。
「……黒が動き出したようです」
‐‐‐‐‐
ヨハンから報告を受けた私は、陛下から対策を講じるように告げられた。
外交の面では、きちんと担当する人間がいるというのに……。けれど、それも仕方ないと諦める。
陛下自身、不穏な動きがある国は、黒の国だけではないと考えているようですから。
「エリクー。大変そうだねぇ」
「……情報屋」
書庫への入り口の所で、王子と仲の良い情報屋のディータが腕を組み、笑みを浮かべて立っていた。
「騎士隊長さんから聞いたと思うけど、黒の動きが活発になってきてる。下の人間は、黒の王直々の命令とか言ってるよ? どう思う?」
「どうって……」
「僕は、自分で見たこと、聞いたことしか信じない。ベルについては例外だけどね」
「なにが言いたいのですか?」
「エリクは、黒の先代王が選んだ王がそんな命令すると思うかな?」
「…………」
ディータは笑顔のまま首を傾げる。
私の体は強張り、その問いに答えられなかった。
「まぁ、いいや。そんなことより、重要な情報があるんだ」
「?」
「ベル王子が狙われてるよ」
「は?」
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