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しかし、今の俺にはやっぱり深呼吸などする意味がないもので、陽の光だって、目を焼くただの厄介者に過ぎない。
夜を侵食していく朝日など、尚苦手だ。
なんとなく舌打ちを一つして、踵を返した。
少し歩くと林に入る。
その中に一際大きな木が二本並んでいる。
何も知らない人が見れば、林の中にある大きな木など気にも留めないだろう。木は森に隠せってことか。
その二本の木の前で立ち止まる。
「1173、林道より転移する」
微かに出た声は突如吹いた風と、それに揺れる木々の音でいとも簡単にかき消された。
それに紛れるように木々の間を一歩、大股で通り抜ける。
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