第1章 王立図書館

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 図書館の閲覧室には、明るい日差しが差し込んでいた。  窓際に据えられた長机には、思い思いの席に数人が座り、気に入った本を読書中だ。  うららかな春の暖かさに包まれて、うつらうつら船を漕いでいる者もいる。  静かな館内。  本を捲る音と、絨毯の上を歩く、密やかで、ゆったりとした足音しか聞こえなかった。  窓辺の机に、本を山積みにして。  その少女は一心不乱に目で文字を追っている。  髪の色は薄く、その上日の光を受けて、いっそう透き通って見え、波打つように腰までを覆う。  文字を見つめる瞳の色は分からないが、長く豊かなまつげが濃い影を作っていた。  それを惚けたように見つめる青年が一人。  少女の美しさを一瞬たりとも見逃すまいというように。  彼は一心に彼女を見つめていた。  そのあまりに熱い視線を感じたのか、少女がふっと顔を上げた。  そして彼女の瞳が、青年を捉える。  宝石のような瞳が。  きらきらと輝く藤色の瞳が。  青年の心を鷲掴みにした。   
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