第1章 王立図書館

3/16
前へ
/16ページ
次へ
 爽やかな風の吹く昼下がり。    アレクサンドル・ラナンは、悪友と共に賑わう繁華街を歩いていた。    黒髪を耳が見えるほどには切り揃え、かと言って、こまめに手入れしているようでもない。    艶やかさを失ってはいないものの、朝整えて出て来ましたとはお世辞にも言えない飛び散りよう。まあ簡単に言えば、寝癖、であるのだが。    それが、先ほどからの緑風に、右へぴょこん、左へぴょこん。    通りすがりの若い女性の失笑を買っている。    けれど、本人は一向に気にしている様子はない。    そんな自分の姿に無頓着な彼だが、その物腰から身分の高いことが窺えた。    行き交う人々と比べても、上質の衣を身にまとっている。    しかし、彼のことをそれ程気に留める者はいない。    ここは王国の中心部。国を統べる王の威光が行き渡る安全地帯。    富める者も貧しい者も、隔てなく憩うことの出来る場所だったから。    だから、アレクの他にも、さらに煌びやかな衣を着た紳士淑女が歩いていたり、かと思えば、麻で出来た質素な衣を着た女性もいる。    けれど、そんな彼らに共通している物がひとつ。    それは、幸せそうに輝く瞳だった。    貴族も、平民も。  きらきらと輝く瞳が、彼らの幸福を表していた。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加