プロローグ

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ーー穴の近くにある本部ーー 神狩隊長は連絡を待っていた。 分を重ねる度に胸の前で組んだ腕を左人差し指が小刻みにリズムを刻んでいる。 「おい!どうなっている!?一班が潜入してから30分が経ったが、音沙汰がない。」 神狩隊長はサッと立ち上がり待機する部隊に近づいた。 すると神狩隊長の殺気に気が付き、部隊の全員が整列した。 「よろしい! では第二班は降下準備。 第三班は…」 神狩隊長が部隊に支持を出している途中に無線が入った。 『応答してくれ! こちら一班! 応答してくれ!』 神狩隊長が無線に慌てて飛びついた。 「こちら神狩だ! どうした? 何があった!?」 『く、黒い物体が! く、くそッ! なんで止まらないんだ!』 無線からは激しい銃撃の音が聞こえ、隊員の声が聞こえない。 「どうした? 何があったんだ? 答えろ!」 『あれは巨大な… うわっ! 来るな! うわッ…』 無線の声を聞こうとその場にいる全員が息を潜めた。 静寂が支配する薄暗く冷んやりとする森の中。 2時間もすれば街に出れると言うのに… 今自分たちがいるのは別の世界なんじゃないかと思うほど異様な雰囲気だ。 そして、沈黙は破られた。 『ぎゃああぁぁあ…ぐぎゃ!』 無線はプツリと途絶えてしまい、本部は再び静寂に包まれた。 神狩隊長の表情はこの世の終わりでも来たのかと思うほど歪んでいる。 「一体…何が起こったんだ? 到着してからまだ、1時間も経って無いんだぞ。 とにかく東京の本部へ報告! 『もう動きだしている』と伝えろ!」 穴の中での出来事は誰も想像できない。 さらに言えばこれから起こる恐怖も誰も想像できはしない。 その恐怖を体感した者は、もうこの世に居ないのだから。
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