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「そもそも、何で風紀は夜中に出歩いてたんだ…?」
『何でも、匿名で校舎に怪しい人物がいるって情報が入ったみてぇだ』
匿名で…?
それってやっぱり、元を辿れば柊の仕業なのだろうか。
あの男のことだから、自身が黒幕だと繋がるような因子は残さないはずだ。
今まで情報を広めていた奴…そしてその匿名ってのも恐らく、柊の配下にある生徒だろう。
『本人も、全て情報を偽装していたってのを認めたみたいで……。今じゃあ学園中その噂で持ちきりだ』
「……そうか」
その捕まった生徒が全てが偽装でガセネタだったと認めてしまえば、俺にかかった疑いは晴れる。
柊は本当に、事を丸く収めようとしているのだ。
でも、その生徒はこれだけの騒ぎを起こして退学。
それって…丸く収まってるのか?
『つーわけだから、徐々に事態も収まってきてるとは思う。もう監視の目もなくなると思うけど……今から学校来たら?』
そういえばそうだった。
俺は監視の目が辛いから今日は学校休むって言ってたんだっけ。
「あー…そうだな。でも今生徒会の仕事やってて、もうちょっとかかりそうだから放課後にでも生徒会室に持って行く」
『仕事っつっても、随分と先のものだろ?別に今やらなくていいだろ』
「俺がやり出したら止まらない性格だって知ってるだろ?」
『………わかった。放課後、生徒会室な』
少し不服そうに一樹は言った。
「何だ、俺に学校に来てほしいのか?」
『……当たり前だろ。一緒に学校行きてぇし』
一樹は照れ臭そうにボソボソと話す。
「今日の放課後には会えるだろ。それまで我慢しろって」
クスクス笑うと、「う、うるせー!」と照れ隠しのように声を張り上げた。
『じゃ、放課後な!!』
そう言って、ブツッと電話は切れた。
「……さ、続きするか」
実はもう、仕事は徹夜して終わらせていた。
今俺がしているのは、荷造りだ。
今日の真夜中に、俺はここを去る。
真夜中なんて夜逃げみたいだが、日が高いうちは目立ってしまう。
2年通い続けたこの学校をこんな形で去ることになるなんて、予想だにしていなかった。
何だかんだで萌えのためだけに入学した学校だったが、2年もいれば多少の愛着も湧くものだ。
今俺は、ここを離れがたく思ってる。
それは叶わない夢になってしまうけれど。
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