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「あいつを学校で見る度、授業に来る度ぶん殴りそうになる」
「それでも一応…堪えてるんですね」
櫻李の場合、それだけでも賞賛ものだ。以前ならすぐに血祭りにあげていたのに。
「だから、昨日ちょっとハメ外しちゃった」
「…え?」
「ひぃの情報ばら撒いてた奴捕まえて、本当のこと吐くまで殴った」
「…えええええ!!」
拾っていた資料を再び落としてしまった。
あたふたと散らばった資料を拾う。
「…でも、それはできなかった」
「ガセだってことは言ったんですよね?」
「うん。それは結構すぐに口を割った。問題は、バックにいる人間について」
ああ…なるほど。
櫻李はその生徒が独断でそんなことをしているわけがないと分かっていて、バックに誰がいるのか聞こうとした。
けれどその生徒は、たとえ櫻李から血祭りにされるほど殴られたとしても口を割らなかったんだ。
櫻李の拳を受け続けてもなお柊の存在を口にしないなんて、相当な忍耐力を要するだろう。
それほど柊も、使う生徒に対しては徹底しているということか。
潔く罪を認め、本当の情報をガセだと言い張って退学していくなんて…まるで天皇のために死んでいった昔の日本軍のようだ。
「で、その生徒は…」
「今朝病院に行った」
「ですよね…」
櫻李にめった打ちにされて病院送りにならないはずがない。
壁ドンでヒビが入るほどの怪力だぞ。握力80キロある化け物だぞ。
巷で噂の女子が喜ぶ壁ドンを櫻李がすれば、胸キュンどころの騒ぎじゃない。心臓が口から飛び出るわ。
「そんなに暴力沙汰になったんなら、櫻李にも何か処分がありそうなものですが…」
「そんなの、風紀の仕事として処理された」
「この学園色々間違ってるよ」
風紀だからといってそんな病院送りになるような事件を見逃すはずがない。
その辺りも、もしかしたら柊のお口添えがあった可能性があるな…
資料を拾い終わり、櫻李が拾ってくれた分も回収しようとすると、逆に俺の資料を回収された。
「こんな大量の資料、またひっくり返すでしょ。俺が持ってく」
「…ありがとうございます」
櫻李の優しさに目をパチクリさせ、俺は歩き出す。
氷の貴公子と呼ばれるような櫻李がこんなことをするなんて、一体誰が想像するだろう。
櫻李のところの親衛隊が発狂しそうだ。
「ところで、ひぃ」
「何でしょう」
「何が理由で泣いたの」
………!?
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