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「なぁ輝…これ他の役員に手伝わせていいか?もしくは、まだ先の分だし期限もうちょっと後にするか…」
おぞましい量の資料を前に、一樹は頬を引きつらせた。
「そういうわけにもいかない。修正すべきところはすぐにしなきゃならないし、他の役員にはそれぞれ仕事を振るつもりだ」
「うそぉ…」
ガクッと肩を落とす。
「一樹のこと信頼してるからこの仕事を任せるんだ。……無理か?」
「お前…っ、マジ…そういうことするんだもんなぁ……ずりぃよ」
はあ…と一樹は深くため息をついた。
まあ、狙ってやってるからな。頼んだぞ一樹。
「…おっと、俺ちょっと用事があるからそろそろ行くな」
時計を見ると17時だ。
「え、もう行くの?」
芹がクッキーを片手に俺の方を見る。お前は仕事しろ。
本来生徒会は18時ぐらいまで仕事をしており、あと1時間ぐらいは時間がある。
「風紀の方にも用事あるしな…。悪いけどあとはよろしく」
「「はーい」」
「…桔梗くん」
「なんだよ」
黙々と芹の隣で会計の資料に目を通していた桔梗くんだったが、俺の呼びかけに顔を上げた。
桔梗くんは最近そこそこ仕事をしてくれるようになったからとても助かる。
芹の尻拭いもたまにしてくれるので、芹も弟を見習って欲しい。
「…累のこと、気にかけてやってくれ」
「何で俺が」
「何だかんだで友達思いの桔梗くんだから…かな」
「なんだそれ…」
チッと軽く舌打ちをされてしまった。
まあいつもの反応だから慣れたもんだが。
桔梗くんはハァとため息をついた。
「お前じゃどうにもなんねぇだろうから…頼まれてやるよ」
ツンデレ桔梗くんが少しデレてくれた。
俺は思わず笑顔になる。
「お前のためじゃねぇからな」
「わかってる」
そんなテンプレ発言しなくても…可愛いなぁ…。
「じゃ、みんなあともうちょっと頑張ってくれ」
俺はそう言って生徒会室を出て行った。
風紀に用があるというのは…嘘だ。
風紀委員に用はない。
俺が向かう先は、校舎の外。
ミャー、と鳴き声が聞こえてくる。
初めて聞いた頃に比べると、大人びた鳴き声になったなぁとしみじみ思う。
「おいクウ、そっちに行くな」
猫が一匹、こちらに駆け寄ってきた。
俺の足元に擦り寄って、にゃあと声を上げる。はい可愛い!
そして続いて、清和先輩が木の陰から姿を現した。
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