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予想していた通りというか何というか、俺にはでかすぎる部屋だった。
ざっと見た感じ俺の家のリビングよりもでかい。16畳ぐらいだろうか。
部屋に入り、ざっと360度見回す。
まるでモデルルームだ、と俺は思った。清潔で統一感があって、必要なものはすべて揃っている。
テレビやオーディオ類は部屋の一角に纏めて配置されており、テレビの前には大きなテーブルと見るからにふかふかのソファーがある。
部屋の四面のうち一面は半分が書棚で埋まっている。
書棚には6割程度すでに本が収納されていて、経営や法など、財界のトップで働くために必要そうなものが揃えられていた。
小窓の傍にはキングサイズのベッドがあり、傍らに観葉植物が置いてある。
とにかく、モデルルームの家具をそのままセットで買い揃えてモデルのごとく置き並べた、無機質な部屋だった。
「どう?輝ちゃんの好きそうな部屋にしてみたんだけど」
「………素敵な部屋だと思う」
「だろ?」
「でも…無個性って感じだな。落ち着かない」
「そりゃそうだろうね。まだこの部屋は使われたことないんだから。これから輝ちゃんが生活感のある部屋に変えていけばいい」
俺がまともな受け答えをしたからか、柊は嬉しそうに話した。
この男が嬉しそうにしている顔を、ここ数時間だけで何度見ただろうか。
どんなに俺がつっけんどんにしていても、俺がこの場にいるだけでこの男は喜ぶ。
今のように普通に受け答えしただけでもこの喜びようだ。
まるで、子どもが新しいおもちゃを与えられたときのような純粋さすら感じる。
「今日は疲れただろう?もう休むといい。バスルームもあるから、シャワー浴びたかったらどうぞ。着替えはそこのクローゼットに揃えてあるからね」
時刻は2時過ぎだった。
どうやら学園からここまでは1時間半ほどかかる距離にあるらしい。
「僕の部屋はこっちだから」
「……つながってるのか」
薄々、部屋の一角にあるドアが気になってはいたが…
壁一枚を挟んで向こうに、柊の部屋があるらしい。
「輝ちゃんに何かあったとき、すぐに駆けつけられるようにね」
俺に何かあるのは、お前が俺を襲うときぐらいだろうな。
でも、柊と同じ部屋であることを予想していたので、まだマシだと思うことにしよう。
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