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「なんで…俺に黙ってそんなこと……」
「そんなに大切なものだった?」
「………あのカフスは、貰い物だったんだぞ…!」
GPS機能も付いているため、俺の居場所を特定できる判断材料だったっていうのに…!
怒りに表情を歪めている俺を余所に、柊は何食わぬ顔で「だったらよかった」と言った。
「なに…?」
「男物ってことは、あの学園で貰ったものでしょ?他の男から貰った物身に着けてる輝ちゃんなんて、見るだけで怒り狂いそうだ」
声の抑揚もなく、淡々と話しているだけに見える。
しかし瞳の奥は怒りに燃えており、目の冷え切った笑みにぞっとした。
「俺の手持ちにまで口出しするな……」
「何その反応。もしかして、大事な人から貰った物…?」
底冷えするような低い声で、脅すような口調で言う。
それだけで相当怒っているのが分かった。
昔から何を考えているのか読めない奴だったが、その男がここまで怒りを露わにするということは、本当に怒っているということだ。
「輝ちゃん……好きな人でもいるの…?」
「……いない」
「ホントに…?」
「本当だ」
これは本当。
俺に好きな人なんて………
「……輝ちゃん、本当にいないんだね?」
柊は探るような目つきで俺をじろじろと見る。
「…ああ」
「なら安心した」
柊はそう言うと、クローゼットを開けて服を取り出す。
「はい、服に着替えて。外で待ってるから、一緒に食卓に行こう」
「先に行っててくれていい」
「何言ってるの。場所分からないだろ?」
柊は俺に服を押し付け、部屋から出て行った。
俺が着替えるのも監視するかと思ったが、今朝のメイドに着替えさせた件といい、どうも紳士的な部分がある。
あの男にそんなものが備わっているとは思えないが、俺に配慮しようという姿勢を見せようとしているのか。
手渡された服は、ビラビラのワンピースだった。
普通に可愛い服だが、学園での俺の格好に慣れていたせいか、どうにも女装にしか見えない。
久しぶりにブラも着けた。
俺の可愛いサイズにピッタリなのが本当に怖い。
ということは、俺がギリギリAカップだっていうことはバレてしまっているのか。
着替えを見られる云々より何より、そのことが絶望的だ。誰か、俺に胸を分けて。
部屋から出ると、待っていた柊が俺を見て「可愛いよ」と言った。
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