4251人が本棚に入れています
本棚に追加
/607ページ
―清和視点―
俺はその日、一本の電話で目が覚めた。
授業が午後からしかないため、朝はぐっすり寝られる。
アラームなんてかけずに、思う存分寝るつもりだった。
その電話がかかってきたのは、すでに日は高く昇った頃だった。
「……もしもし」
相手を確認すると藤堂で、山田じゃないことに内心舌打ちしつつも電話に出る。
『あ、先輩!!』
「なんだよ俺様の眠りの妨げしてんじゃねぇ」
『寝てる場合じゃないっすよ!!大変なんです!』
「大変…?」
あまりの切羽詰まった言い方に、寝ぼけ眼だった俺も目が覚める。
『輝がっ………退学しました!』
「……………!?」
退学…!?
昨日まで顔合わせて、猫と楽しそうに戯れてたのに……
「おい…どういうことだ」
『あいつ…前から柊に脅されてたんですよ。今回の事件で理事長をバックにして、自主退学するようにって』
「まさか、止めなかったのか?」
『いやいや、止めましたよもちろん!そのときは輝も納得して、退学取り消してくるって言ってたぐらいなんですから』
「じゃあなんで………」
『俺にもそこがさっぱり…』
藤堂に相談はしたようだが、それを覆す何かが起こったのか?
柊にまた別の何かで脅されたのか?
「昨日、あいつの様子はどうだった?」
『えーっと…………いや、普通でしたけど』
だよな。
俺自身、昨日山田と会ってそれは知っている。
驚くほどにいつも通りだった。
今となっては、俺たちに気付かれないようにするためのものだったのだと分かる。
『…………あ、』
「どうした」
『昨日学校休んでました。……まぁ、荷造りしてたんでしょうけど』
「……だろうな」
『それと、当分先の仕事を終わらせて、放課後に生徒会室に持ってきてました』
「………律儀だな」
生徒会に少しでも負担がかからないように、という気配りが実に山田らしい。
会長が退学する時点で相当負担になってるんだよあの馬鹿。
それは山田も分かってるはずだ。
だとしたら、やっぱり全てを覆す理由が、退学を受け入れる何かが、あいつの身に降りかかったんだ。
山田なら、一体どんな理由で柊の言いなりになるんだ…?
「そういえば、あいつとは連絡とれるか
?」
『いえ…駄目です。メールも電話も繋がりません』
「じゃあ実家」
『それも駄目。実家に帰ってないし、輝に関しては何の情報も貰ってないっておばさんが言ってました』
最初のコメントを投稿しよう!