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路地は右に左に折れ、徐々に街の中心部に向かっていた。
だが、路地そのものは一本しかなく、横路に入って三人組を巻くこともできない。
男の体力も限界に近かった。
そんな男が直線の長い路をなんとか逃げ切り、左に折れた時だった。
目の前に突如として、巨大な石畳の階段が姿を現し、男は思わず息を呑んだ。
もう一度確認しよう。
男の身体は走るようにはできていない。
体力も限界に近かった。
量の少ない髪は汗でピッタリと額に張り付き、手足は疲労で震えがきている。
肺や心臓は張り裂けそうなほどに悲鳴を上げていた。
そんな折に、石畳の長い階段が目の前に現れた。
男の心が折れるのは、いとも簡単だった。震える足を無理に運び、ヨロヨロと階段を数段あがる。
だが、それだけ。
この階段を駆け上がり、その先も逃げ続けるだけの体力は身体にも精神(こころ)にも残っていない。
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