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コートを埋めるように差し込まれた無数のハサミと、一本の猟銃があった。
さっきからしている無機質な音の正体はこれだった。
猟銃とハサミが擦れ、ぶつかり合う音。
少女は最後の一段で立ち止まると、不気味な笑みを浮かべ、口を開いた。
「ここから先は『アヴァロン』の領域だ。ここに至った者を傷つけることは、何人たりとも許されない」
突き刺すような高音。
圧倒される気配。
「それを破る者は、直ちに処分する」
殺気ではなく、狂気が。
憤怒でなく、歓喜が見え隠れする。
「つまり、さっさと消えねーと肉片にして鳩に食わすぞっていってんだけど」
それはおそらく、愉しんでいる。
それはおそらく、期待している。
「お前らの選択肢は二つ。さっさと逃げて人間のままでいるか、私と殺って肉片になるか」
血と硝煙の入り混じる、この街ではお馴染みの”殺し合い”(カーニバル)を。
「Do you understand?」
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