開幕のベルはまだ鳴らないーOne Week Agoー

6/15
前へ
/22ページ
次へ
コートを埋めるように差し込まれた無数のハサミと、一本の猟銃があった。 さっきからしている無機質な音の正体はこれだった。 猟銃とハサミが擦れ、ぶつかり合う音。 少女は最後の一段で立ち止まると、不気味な笑みを浮かべ、口を開いた。 「ここから先は『アヴァロン』の領域だ。ここに至った者を傷つけることは、何人たりとも許されない」 突き刺すような高音。 圧倒される気配。 「それを破る者は、直ちに処分する」 殺気ではなく、狂気が。 憤怒でなく、歓喜が見え隠れする。 「つまり、さっさと消えねーと肉片にして鳩に食わすぞっていってんだけど」 それはおそらく、愉しんでいる。 それはおそらく、期待している。 「お前らの選択肢は二つ。さっさと逃げて人間のままでいるか、私と殺って肉片になるか」 血と硝煙の入り混じる、この街ではお馴染みの”殺し合い”(カーニバル)を。 「Do you understand?」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加