開幕のベルはまだ鳴らないーOne Week Agoー

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2 「吸血鬼(ヴァンパイア)退治?それは、私の管轄じゃないんじゃなあい?」 その手にこびりついた血をウェットティッシュで拭き取りながら、赤い少女は不満の声を漏らす。 少女の目の前には、血が染み込み赤ピンクに変色したゴミの山ができていた。 そのゴミ山に新たな一枚を加えながら、少女は新しいウェットティッシュに手を伸ばす。 「そもそも、殺傷能力系なら『白雪』(Snow White)の方が手っ取り早いだろお。”七”も引き連れてるんだからさあ」 「”イヴ”は、別の依頼で出てるんだよ。だから君に頼っているんだ、レム」 少女の横に座る、金髪を腰まで伸ばした眉目秀麗な青年が、落ち着いた様子で喋る。レムと呼ばれた少女は、それでも納得のいかない様子で頬を膨らませたまま手を拭き、新たなゴミを山に積んで行く。 「レイヴン。あんた、私のこと絶対嫌いでしょ」 「好き嫌いの問題ではない。この依頼に適任か否かという話なんだよ」 「だったら、なんで私なんだよ。『白雪』 を待った方が確実じゃないわけ?」 「イヴとはすれ違いだったんだ。ついさきっき『仄暗い森』の魔女に喝を入れにいったところさ。それとも、交代するか?」 「うげろ、絶対イヤだね。あのおばさん、生ゴミの臭いがすんだよ」 思い出してしまったのか、レムは鼻を摘まんでイヤイヤと首を振る。 にしても、酷い言いようである。
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