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もし他の人間がその様子を見ていたら、本気で町を心配している、そう思っただろう。
しかしーー
「綺麗事はいいんだよ、オッさん。本音を言えよ。このままじゃ、”オレの豪勢な食費を賄う税金がとれなくなる”ってな」
神懸かった美脚を机の上で組んでふんぞりかえりながら、レムはビクトールの発言を鼻で笑う。
「権力者が綺麗事言ったところで、結局は偽善にしかすぎねえよ。汚くても本音を言えよ、本音(マジ)なとこをさ」
その顔に浮かぶ嫌悪感を隠す事もせず、レムは言葉を吐く。
「私たちが必要としてんのは、事象と対価。現実起こってる事象に対して解決時の対価を正確に算出すること。それ以外、あんたの話を聞く意味はないんだよね。対価が払えないなら依頼は白紙さ」
なっ!
と、ビクトールは息を呑む。
それは心外な事を言われたからか、あるいは、
「図星ってか?まあ、驚きゃしねーよ。こんな世の中”表”と”裏”が無いことの方が気持ちが悪い」
「私は!」
言いかけた言葉を、レムは机を脚で叩いて遮った。薄ピンクに染まった塵の山が崩れおちる。
「何度も言わせるな。欲しいのは”事象”と”対価”だけだ」
そこにあるのは怒り。
そして、殺意。
戦闘とは程遠い存在のビクトールでさえ、直感で感じられる程の”意志”が、彼の口を封じる。
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