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この森は、一人の「魔女」が支配している。
空間、生命、そして時間すらも。
森に存在するあまねくモノは、その存在に掌握される。それがこの森での「ルール」であり、「絶対遵守の法則」であった。
だからこそ、この森に入ったモノは何であろうと「彼女」の目を免れる事はできないのだ。
故に、この森に立ち入るモノは殆どいない。
いくらこの森が近道であったとしても、いくらこの森を通らなければ間に合わない行程であったとしても、それでもなお、殆どの者は避けて通る。
ーー「仄暗い森」の先に光は無いと思え。
それがもっぱらこの周辺地域での言い伝えとなっていた。
にも関わらず、ミリタリー姿の女は、そんな伝承など嘲笑うかの様に、陽気に、軽やかに森の奥へと進んで行く。
場違いな陽気さは、狂気にも似た何かを思わせる。
そんな女がふと、突然に立ち止まった。
何かを思い出した様に、或いは何かを忘れてしまったかの様に。
不意に立ち止まり、空を見上げ、大きく目を見開き、口を開き、小刻みに息を吐きながら、女は叫び聲を上げた。
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