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「君は不運で可憐な一輪華さ。僕という蝶に吸い尽くされる運命を持った、ね」
口角を上げて笑う男の口元から覗くのは、凶器のように尖った凶悪な犬歯。
蝶というよりは、巨大な蛾を思わせるような雰囲気を持つこの男こそが、この街を恐怖に陥れる元凶。
「では、いただきます」
言葉と同時、ぐわりと、男が大きく口を開けた。そして、その白く可憐な頸筋に向かって、その凶悪な犬歯を突き立てたーー
否ーー突き立てようとした。
その行程でガチリと、硬い何かに阻まれ、男は目を見張る。
「何!?」
咄嗟に身をよじって、女性から飛び離れた男の行動は正しかった。
男の動きが止まった隙をみて、首元に当てていた腕を上に弾き飛ばした女の左手が、”それ”を横一線に凪いだからだ。
「貴様!」
ハラリと、男のコートの端が切り落とされる。
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