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だが、驚くべきことは他にあった。
振り返ったその女の右手。
細いが、しっかりと引き締まったその腕に、一メートルを超える猟銃が抱えられていたからだ。
おそらく、男の食事を邪魔したのは”あれ”だ。
「貴様、何者だ?」
男はゆっくりと、舐めるように女を観察する。
目に入るものから、情報を探る。
紅いフード。
紅いピンヒール。
狩猟用の猟銃。
銀のハサミ。
……ハサミ?
そこでふと男は気づいた。
その女が、実はまだ年端もいかぬ少女だということに。
そして気づいた。
”とある物語”の存在に。
「まさか!?」
驚愕と恐怖が、男の顔に同時に浮かんだ。そんな筈はないと、そんなわけはないと。
だが、それを打ち砕くように。
少女は笑って、嗤って、
「私の専門は”狼”なんだけどさ、まあ、今回は特別だよ。お前、キモいし。とりあえず、”ハサミ”と”猟銃”選ばせてやるよ。Do you understand?(おわかり?)」」
そして、夜の狩りが始まる。
楽しくて愉快な『童話』(騒乱)の始まり。
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