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「はぁ、ヤバい。バイト遅刻ちゃうっ」
足早に次のバイト先に向かっていた。
今の時刻は十七時五十分。
出勤時刻は十八時ジャスト。
沢山の人の中を垣間見て歩いていたのだけど、こんな大きな街じゃ道を見失ってしまう。
それに、このままじゃ間に合わない。
そもそもだ。
掛け持ちしている海月も悪いけど、なんで朝からバイトに入って、十六時に終わるのだ。
そっちは家に近い方だけど、次のバイト先は街にまで出ないとないし。
それなのに。
あの男が無駄に引き留めるから。
ほんとに、嫌い。
ただの無能な男のくせに。
「近道しちゃえっ」
途中で見かけた路地裏。
こういうところは余り利用はしない。
けど、時間のない今。路地裏を使って行くしかなかった。
こっちの方が人だっていないし。
「これなら間に合」
急いで曲がり角を曲がった時だった。
向こうから来た人にぶつかってしまう。反動で海月は後ろに尻餅を着いてしまう。
「どこ見て歩いてんだっ!!」
「ごめんなさい」
なんか面倒そうだな。柄の悪そうなお兄さん。
「てめぇ、本気で謝ってんのか?」
海月は立ち上がって、学校帰りの制服をパンパンと土を払う。
「ごめんなさい。私、急いでるんです」
柄の悪そうなお兄さんの横を通り抜けて行こうとしたのだけど、グッと腕を掴まれ、壁に押し当てられる。
「…離してください」
「JKか。良くみりゃぁ、良い体してんじゃん?乳だってでけぇんじゃね?
うっはぁ、エロい体してんねぇ」
舐めるように男は海月を見る。
海月は怖くなって、軽く腕が震える。
「は、離してっ」
「かっわいい~。なになにぃ?そんなことしちゃう訳ぇ?いいねぇ。抵抗とかマジ虐めたくなるじゃん?」
囁くように男は耳元で話す。
「い、いやっ」
「すげぇそそる顔。やっべぇ、マジでヤりたくなってきちった。ちょっと来いよ」
グイッと腕を引っ張られる。
あまりの強さに海月は勝てない。
「いやっいやっ!離してっ!」
「あららぁ?泣いちゃうわけぇ?いいねぇ、可愛いじゃん?じゃあ、ここでしちゃう?」
怖い。
怖い。
もう、こんな道使わなきゃ良かった。
ああ、ほんと。
世の中、こんな男ばっかり。
エロいことしか脳がない。
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