第一話

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第一話

 ある不幸な男の孤独死を目の当たりにして、はや数ヵ月。あの事件に関してもやもやしたものを、私は拭い去れないでいる。  が、既に『自殺』として処理されてしまっている事件である。  そんな曖昧な根拠で捜査できるほど、警察と言う仕事は暇ではない。 『労働者』  としては休む暇さえないほど、大小様々な事件が日々発生している。本当なら、警察なんてお仕事は『暇な』方がいいに決まっているのだか……それをありがたい、と思う不謹慎な気持ちもなくはない、公僕として働く充実感という奴が。  まあ、どっかの元警察官とやらが、とあるバラエティ番組で暴露したように、外回りを口実にして朝からパチンコに興じているバカもいる、などと言うことも、ない訳じゃない。  所詮、『人間のお仕事』である。汚い部分をほじくり返していてはキリがない。  幸い、と言っていいだろう。私は叩いてホコリが出るような、そんな後ろ暗い仕事には携わらず、ここまで真面目に勤めあげることができた。  今現在も、恐らくは大半の同僚達よりは、勤勉かつ忙しく、日々の業務をこなしている。
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