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そう思うと、急な異動もまあ悪くない。口には出さず、私はあの事件の資料に目を向け、新米のほうを見ずに言葉を投げる。
「……お前、元々交通課の婦警だったんだよな?それがなんで刑事になろうと思ったんだ?」
「そりゃあ勿論、なんたって刑事部捜査課は花形ですし、私の憧れでもありましたし……」
よくよく考えると、この新米とはこんな些細な、他愛なやり取りさえしたことがなかった。
「それでも最初は交番勤めか、それとも警備部か……」
私は交番勤務、いわゆるハコヅメから手柄を立て、幾つかの適性試験を経てからここにいるわけだが。
「それはあれですよ、志望と適性は必ずしも一致しないと言うか、夢を仕事にするのに、一抹の不安と言うか、ためらいがあると言うか……」
まあ、要するに優柔不断なわけだな。
……女、としてはひょっとしたら珍しいタイプ、なのかもしれない。今さらだが、確かにコンビを組んでからこっち、新米に対して『異性』を感じたことがなかった。
別に異例というわけではない、それなりに能力はあると認めてはいる。
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