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それを伝える為にも、敢えて、手元にあった苦手な甘味を自ら口にして、身を犠牲にできる想いで愛していると伝えるクロアの口付けの意図。
それが何処までロアに伝わるのか分からなかったが、そっとクロアの体に廻されるロアの腕。
『クロアはこんなにも私の事を理解してくれているのに……、』
「私は本当にお前の恋人として到らない事ばかりだ…」
自分自身の言動の一体、何がクロアを怒らせてしまっているのか、ロアは答えが分からず、胸が苦しくなった。
クロアの恋人として未だ、理解できない事柄が多いロア。
それでも、
「私はお前の怒りの原因に気付くまで、時間が掛かるかも知れない…」
「俺は気が長い方だから気にするな、」
ロアの不安に微かな苦笑を滲ませ、優しく応えてくれるクロア。
クロアの為ならば、どれだけ後悔し、辛く情けない想いに打ち拉(ヒシ)がれて、醜態を晒す事になろうとも、ロアはクロアの心を理解しようと思う。
「ロア、」
「ん?」
「愛してる」
僅かにロアから身体を離し、口付けを交わすように、コツリ―とロアの額に己の額を重て、クロアは甘い口調で愛の言葉を告げる。
途端に胸を擽る想いがロアの心に満ち溢れ、全身が熱く高揚して行くのが分かった。
頬から目許、耳へと広がる羞恥。
だったが、
「ロア、お前…、」
「なん……、」
「発熱しているぞ」
「は?」
ロアの額に額を重ねていたクロアが羞恥以外の熱に気付き、厳しい口調で指摘する。
「雨に濡れて体を冷やしたせいだな」
発熱の原因を告げながらロアから離れると、徐(オモムロ)に床で二人の脚にジャレ付いていた聖獣の子供をクロアは拾い上げ、ロアの腕に抱かせた。
元々、力の封印を維持するために常に体力を削られ、疲労が蓄積されると突然、発熱し倒れてしまう事もあるロアの身体。
冷えきった身体の体温を維持するために、余計な負担が係り発熱し始めた事にクロアは気付き、聖獣の子供を抱かせたロアの身体を抱き上げて、
「俺の部屋とお前の寝室。寝込むならどっちが良い?」
ロアの寝室とクロアの私室。
その間に立ち、問い掛けるクロアにロアは、
「お前の部屋に決まっているだろうが、」
呆れた口調で応え…、
その日の夜。
高熱を発し朦朧とする意識の中で、ロアは懐かしい夢を視るのだった。
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