†朔†

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休暇日が明けて、クロアはロアの代わりに次期聖主側近と聖司補佐官を兼任しながら、現聖司官代理となる前聖司官のレティスに神殿の管理を一時任せ、ロアの看病を続けていた。 その為に、クロアの私室に居てもロアに対しては側近のままであるクロアの態度。 「……問題は………?」 「今のところ何もありません」 「…そうか……」 聖司官である自分が不在となった事で、神殿内の管理に生じる不備を確認するロアと応じるクロアとの短いやり取り。 その間に、クロアは一度、ロアの額に置いてある布を取り、冷水に浸して絞り、取り替え、 「…クロア………」 「はい」 「…私は……側近のお前を………蔑ろにしていたのか………?」 「ロア様?」 ロアからの突然の問い掛けにクロアは思わず、瞠目した。 「………もしも……そう…なら……、すまない……」 夢の中で気付いた、クロアの怒りの原因。 ロアにはそれが正しい答えなのか確信が無かったけれど、雨の降り頻る中、転んで動けなくなってもクロアを呼ばなかった事も、ロアの護衛を一時的に離れなくてはならない武道大会への出場をクロアに迫った事も、ロアを護る存在である側近としてのクロアの矜持を蔑ろにしていたのだと、ロアは気付いた。 全く自覚が無かったからこそ、ロア自身が自覚を持って気付かなくてはならなかったクロアの怒りの原因。 夢の中で、昔の心があったからこそ気付く事が出来たロアからの謝罪。 熱に侵された意識の中で、熱く乱れた苦し気な吐息を吐きながら、クロアに謝罪するロアの言葉に、クロアは愛しさに満ちた微笑みを浮かべ、安らぎの眠りをロアへと与えるように労りに満ちた仕草でロアの髪を手櫛で梳(ス)き、 「気付いてくれて、ありがとうございます」 側近と恋人の狭間に立った時のクロアの口調。 再び、遠退く意識の片隅でロアに聞こえたクロアからの感謝。 熱で朦朧としたロアの意識が見せた幻かもしれないけれど、ロアの唇にクロアの唇がそっと触れたような気がして、 「お休み、ロア」 現の狭間で遠く意識の中、クロアの声を聞きながら、深い眠りに落ちて行くロアだった。
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