†朔†

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水中を緩やかに漂うように意識が揺れる。 再び眠りに落ちてから、一体、どれだけの時間が経ってしまったのか。 モソモソと頬を擽る柔らかな感触に襲われ、ロアが目を覚ますと、そこには、 「ッ?……けだ……」 「キャンッ!!」 「ッ…まッ!?……ッッ……ぅ゛!!………こらッ!!……やめッ!!……」 真っ白でふわふわの聖獣の子供に、頬や目許を思い切り嘗められ。ロアは寝起き直後の状態を襲われた。 「ッ~~!……くッ……だか………だから…、やッ……止めろと言っているだろう…」 「キャンッ!!キャンッ!!」 寝起き様での聖獣の子供からの思わぬ奇襲に、完全に目が覚めてしまったロアは、なんとか聖獣の子供の攻撃を避けて寝台の上に起き上がると、柔らかく暖かな聖獣の小さな身体を片手で掬い上げ、まだ、羽毛の掛布に覆われたままの膝の上へ降ろした。 ようやく熱が完全に下がったようで、発熱で生じていた不快感や息苦しさが消え、身体が軽くなったように感じながら、クロアの部屋の寝台の中で聖獣の子供に起こされたロア。 寝台の上から室内灯の明かりに照らされたクロアの部屋の様子を見渡し、普段ならば、ロアが目覚めると常に傍らに控えている筈のクロアの姿が、何処にも見当たらず。光の関係で鏡のように室内を映し出す窓から外の様子を窺えば、すっかり雨も上がり、夜の帳が深く降りていた。 「お前はクロアが何処に行ったのか、知らないのか?」 「クゥン」 膝の上でロアの手にジャレ付く聖獣の子供にクロアの行方を訊ねれば、聖獣の子供は甘えた声を上げ、ロアの手に鼻先を押し付けると、再び、楽しげにジャレ付き始めてしまう。 ロアの言葉を理解しているのか、いないのか。まだ子供であるために判断が着かない聖獣の子供の無邪気な反応。 それにロアはほんのりと淡い苦笑を浮かべ、 「ロア様?」 「?クロア…」 不意に呼び掛けられたクロアの声にロアが反応すると、扉の位置に湯気の立つ手桶と幾つかのタオルを片手に抱えたクロアが立っていた。 「お目覚めになられて居られたのですね」 「毛玉に起こされた」 「…………………………」 『やっぱり、毛玉呼びなのか』 淡々としたロアからの応えに、クロアはロアの膝の上で遊んでいる聖獣の姿を見詰め、なんとも言えない心地になってしまう。
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