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「今は何時(イツ)だ?」
「火曜の夜です」
どれだけ寝込んでしまったのか訊ねるロアの問い掛けに、二日間も寝込んでいた事を告げるクロア。
「そうか」
「神殿の方では幾つか、ロア様に直接眼を通して頂かなくては成らない書類が出てきました他は、特に問題はありませんでした」
手にしていた手桶とタオルを寝台横の小卓に置き、クロアは二日間の神殿の様子を報告する。
「分かった」
「急ぎの書類はありませんので、今日まではゆっくりとお休み下さい」
「あぁ」
「お体を拭く用意をしたのですが、湯浴みの方になさいますか?」
ロアがクロアからの報告を了承すると、湯の張った手桶とタオルをクロアが示し、発熱が原因で汗を掻いた状態をどうするのか訊ねる。
ロアが目覚めた時にクロアが不在であった理由。
汗で不快な筈のロアの身体を清める用意として準備された手桶とタオルを、ロアは見詰め、
「少しだけ、身を清めて……クロア、」
「はい」
「お前と一緒に湯浴みをする」
「ロア様?」
入浴を手伝わせる意味ではなく、二人で共に入る意味で、ロアはクロアを誘った。
「もう夜だ。ならば、私はお前の恋人で、お前は私に敬称を付けるな」
「ロア」
ロアからの許しに、落ち着いた側近の表情から甘い恋人の顔付きに変わるクロア。
そのままクロアはロアの頬を優しく撫で、
「心配した」
「ん……」
安堵の思いを伝えながら、甘く、口付けて来た。
ロアの下唇を優しく甘噛み、深く、柔らかく、口腔を愛撫しながら目覚めたばかりのロアの体調を気遣い、存在を確認するかのような長い口付け。
「…ん………ぁ……ふっ……」
「クゥン…」
口付けの狭間の吐息に紛れる甘喘ぎの声と聖獣の子供の淋しげな鳴き声。
無意識にロアとクロアの手がロアの膝の上に居る聖獣の子供の目許を覆い、触れ合った互いの指先が絡まり合う。
そうして、
「んん…………は…ぁ………」
ようやくクロアの唇からロアが解放されると、
「身体を拭こうか?」
「ぁ……」
口付けの感覚に軽く弛緩したロアの身体をクロアは支え、夜着の胸元を寛げると、湯を張った手桶にタオルを浸し固く絞り、寝台の端に腰掛け、ロアの身体を丁寧に清め始めた。
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