†十六夜†

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三年に一度、三日間の日程を要し開かれる武道大会は、神族、天族などの階級に囚われず聖界に住まう者全てが大会出場の資格を持っており、一部の既に武道、武術を専門とする役職者、又は実力の明確な階級者達が上官からの出場許可を必要とする以外は、各階層で行われる予選大会を勝ち抜き通過した一般の者達が大会当日となる本選に出場していた。 そして、大会の優勝の如何(イカン)に関わらず、試合結果の成績によっては下位の天族であっても各組織の高官にその実力を認められ、ある一定の階級や資格、実力がない限り、簡単には採用されない中央組織、神殿、元老院への採用が認められ、謂わば実力勝負での出世が望める場でもあり、又、各組織の高官達に取っても、予選大会の段階から優れた才能を持つ者を見つけ出す勧誘の場でもあった。 その為に、聖界に住まう者達の武道大会への関心は強く。出場希望者の数は勿論、本選となる大会当日の観戦を希望する者達も多く。 大会当日の間は各組織の高官達に組織の筆頭となる代表者達も公式の場として正式に大会を観戦し、ロアも神殿筆頭聖司官ではなく、聖界の次代を引き継ぐ次期聖主として、父である現聖主と共に公の場に立たなくては成らなかった。 そうなれば当然、ロアの護衛は次期聖主側近、クロアの役目なのだが、 「だから、当日の私の護衛は……」 「ロア様」 「ッ…」 ロアの反論の途中で、クロアは唐突に側近の口調になり、ロアの言葉を遮ると一人、寝台を降りて、 「御命令であれば従います。ですが、個人的な意志を尊重して頂けるのであれば、考えさせて下さい」 寝台脇に直立し深く頭を垂れながら、ロアの従者として主に願い出る。 大会当日は現聖主も出席する為に、ロアの周囲はクロアだけではない護衛が着く事になっていた。と、云うよりも、ロアが公の場に立つ時は現聖主の意向により、常に聖主よりもロアの周囲の警備の方が厳重だった。 その事を挙げ、クロアが試合出場中であっても、自分の身柄は安全であると告げようとしていたロアだったが、クロアに従者として願い出られてしまえば、強要ともなるこれ以上の説得は出来なくなり、 「お前が……そこまで言うのなら、これ以上は何も言わない」 「お許し頂きありがとうございます」 「頭を上げろ…」 ロアの許しを持って、頭を上げたクロア。
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