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だけど事態は思うよりも早く転がり始めていた。
「リカ………どうだったかな」
一学期もあと1日となった放課後。
采女と職員室に向かう。
お金を貸してくれと言った次の日から、
リカは学校に来ていない。
最初はリカのお母さんから、風邪気味という欠席の連絡があったけれどそれもとうに1週間を過ぎた。
「沢田先生の言ってた、気になることってなんだったのかしら」
采女の言葉に黙って頷く。
心配した沢田先生が、リカのおうちに連絡したところ、急遽家庭訪問が決まり自習になっていた。
職員室の扉を二度、ノックしてから横にスライドさせる。
「失礼します。
沢田先生に用事があるので入室よろしいでしょうか」
「ハーイ」
パソコンを見ながら軽く許可をくれた
扉に一番近い先生に会釈して、沢田先生を探す。
と、同時についつい先生の姿がないか見回す。
良かった………いない。
あの日以来、先生との接触をできるだけ避けていた私。
といっても、授業担任じゃなければ
最初から接点なんてほとんどない1年生。
案外簡単に、糸は切れてしまっていた。
それでも今は、どんな顔して会えばいいのか分からない私は、そんな環境に切ないような、ホッとしているような。
複雑な状況だった。
「あれ?沢田先生、まだ帰ってないよー」
采女と沢田先生の机を目指していると。
長谷川先生が、キャスター付きの椅子をコロコロと後ろに転がし、体を反らせながら
顔を出した。
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