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振り向かなくても、分かる声の持ち主に
心拍数は上がるばかり。
「あ、冴島どこ行ってたのー?」
「準備室。陰陽師談義、まだ続くなら
羽村借りていい?」
私の横を通り過ぎるとき、先生が、頭をポンと叩いて長谷川先生に近寄る。
「えー、陰陽師は気になるけど
羽村と何話すか、もーっと気になるんだけどなぁ~」
ヘラッと顔を柔軟に崩しながらも
目が全く笑っていない長谷川先生に一種の恐怖を感じる。
「ハセ………左袖のボタン、取れかかってるヨ」
「うそっ!これおろしたてなのに!!」
慌ててボタンを確かめる長谷川先生。
「あら大変。
私がつけ直しましょうか?陰陽師の話しながら。
冴島先生、どうぞ郁ちゃんとごゆっくり」
采女は意味ありげににっこり微笑むと、
立ち上がろうとする長谷川先生の腕を掴んだ。
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