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それは数日前。
魔王ディルムがシスターに討たれたのも記憶に新しい頃のことだった。
その日も、いつも通り仕事の無かったアルスは玉座に腰掛けていた。
カゲタネの目の前で。
「アルス殿、ダメでゴザった。魔王国含め近隣の国では拙者の忍者刀を直すことは不可能の様でゴザル」
「そうか……無理なのか。ナイフなら一杯武器庫に転がってるけど……?」
「ナイフと忍者刀は同等のものとして見ることは出来ないでゴザルよ。刃渡り、強度、そして何より切れ味が違うでゴザル」
ディルムの件と時を同じくして、カゲタネの忍者刀が斧使いトスカによって折られてしまったのだ。
そして現在、新しいものを買おうにも売ってすらおらず、直そうにも忍者刀どころか刀すら知られていなかった。
つまり、この国どころか大陸の範囲で忍者刀の修復は不可能だと分かったのだった。
「にしてもなぁ、こうなっちまったらそれ無しで戦ってもらうしか……」
「拙者、それでは生き残れる気がしないでゴザルよ」
「カゲタネよぉ、お前忍者刀が無くなった途端弱そうになってねぇか?」
それに無言で頷くカゲタネ、自覚は一応しているようだった。
まあ、極限まで武器に依存して戦っていたカゲタネからすれ無理もないことなのだろう。
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