51人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
戦から一か月が過ぎようとしていた。あの日、ナオトを庇ってサクラが姿を消した。その時「武士桜」の花びらは一枚残さず散っていた。
それが何を意味するのか武神たちは知っている。だが誰もそのことを口に出せずにいた。
皆同じ気持ちだったのだ。皆、己を責めていた。
もっと早く敵を倒していたら。ナオトの元へ駆けつけていたら。
そう思わないものはいなかった。
『スウェイ殿、少しはお眠りください』
タカノリがスウェイに向かって言った。スウェイは誰よりも己を責めていた。本当ならば自分がナオトの盾とならねばいけなかったのに。
あの日、ナオトの悲痛な叫びが城跡にもう一度響き渡った時だった。
『ナオト!』
城跡に辿り着いたスウェイはナオトが叫びながら火柱に包まれるのを見た。
『ナオト!』
スウェイは叫びながら炎の中へと飛び込み義兄の身体を抱きあげた。
『サクラ・・・』
力なくサクラの名を呼び続けるナオトの姿。それを見て理解した。何が起こったのかを。
『すまぬ。俺がもっと早くここに来ていれば』
『スウェイ殿!』
そこにナオキとケンジロウがやってきた。
『ナオト殿』
ケンジロウは信じられなかった。主のこんな姿を見た事など一度もない。
『一体何があったのですか?』
気を失っているナオトをナオキに預けるとスウェイは口を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!