プロローグ

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あの人は、父の提案がきっかけで家にやって来た。 「家政婦を依頼しようと思う。」 ある晴れた春の日の早朝、焼きたてのトーストの香りが漂う食卓で父は言った。 「家政婦?」 食卓を囲む兄弟3人揃って父に注目する。 「お前達は母さんが亡くなってからよく頑張ってきた。3人で力を合わせて家事をこなし、とても感謝している。今年は新(しん)が受験生だ。勉強に集中させてやりたい。蓮も留学する為の資金の為アルバイトを再開したいようだ。」 「父さん、葵、新、すまない。」 兄が父の説明を受けて私達に謝ってくる。 私の名は御沙薙 葵(みさなぎ あおい)(17)。高校2年生である。私には兄の蓮(19・大学2年)と弟の新(15・中学3年)がいる。 去年、事故で母を亡くしてしまい、父さんと兄弟3人力を合わせて暮らしてきた。 父・御沙薙 啓介(45)は製薬会社に勤務している。 弟の新はこの春から受験生となった。 兄の蓮は通訳を目指して外国語大学に通っている。 御沙薙家の教育方針は高校生以上になったら自分がやりたい事の資金はできる限り自分で稼ぐというスタイルだ。 兄は来年3年生になってから一年間アメリカの大学に留学 したいと考えているようで、去年母さんが亡くなるまではカフェでバイトしていたが母さんが亡くなった後、料理上手もあって食事を作る担当になっていた。父さんと私と新の弁当も作ってくれている。その為バイトの時間が合わずにバイトを辞めた。その後も中々時間的に合う物が見つからずに放課後は家事に専念していた。 しかしアメリカの大学に一年間留学したいという気持ちが固まって資金集めの為にバイトを再開したいとの事だった。
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