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海の仲間から忌み嫌われているサメ。元気で人気者のイルカ。サメは恐ろしい形相をしているけれど、実は優しい心の持ち主。
イルカはサメと出会い、仲良くなり、いつしかサメは海の仲間から受け入れられるようになる。サメはイルカの一番の親友になった――そんな『お話』。
幼稚園児の想像力なんてこの程度だ。どこかで聞いたストーリーを組み合わせたつぎはぎのもの。
記憶の波が引いていく。現実の海に放り出された。下らない。はみ出し者が、周囲とは違うものが輪の中に入れる。みんな仲良し。
実際にそんなことあるわけないじゃないか。やはり幼稚園児の発想でしかない。
でも、
「ハックション!」
くしゃみが出た。
風邪ではないはず。埃が舞ったのかな。サメのぬいぐるみを置いた。手を伸ばし、箱からティッシュを取り出した。
チンッと鼻をかむ。丸めたティッシュを投げた。
キレイな放物線を描き、それはゴミ箱へと入っていった。
「ハックション! クション!」
今度はくしゃみが二連続。
チーンと鼻をかんだ。頭が少しぼんやりとする。側にあるサメ。ぬいぐるみの中に紛れているイルカ。その両方を眺めた。
捨てられないもの。捨ててはいけないもの。誰にでもあるはずだ。
私はサメとイルカのぬいぐるみを並べて置いた。
思わず笑みがこぼれる。自分のしたことではあるが、子供っぽい。子供っぽいけれど。
もう一度それらを動かす気持ちには、不思議とならなかった。
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