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「暗い所苦手?」
「はい……子供の頃に間違えて車のトランクに入っちゃって閉じ込められたことがあって……なので今でも暗くて狭いところが苦手で」
「それ、どーやって間違えたらそんな事になんの?バカだろあんた」
そう言って少しだけ彼は声に出して笑った。
バカって……ひどい。
でも否定できない。
「否定はしません。こんな状況になったのも私のせいだし」
「まぁ、あんな勢いよくボタン押し続けたらこんな古いエレベーター壊れる事くらい予想できるとは思うけど」
さらっと嫌みを言う人。
だけど掴んでいる腕は、暖かかった。
「でも、こんな経験なかなかできないからいいよ」
目つきも鋭くて、一瞬見たとき怖そうな人だと思ったけれど……多分この人は優しい人。
そう思った。
その後も少しだけ会話をしていたら、やっと電気が付いてエレベーターが動き始めた。
「あっ動いた!良かったぁ……」
隣を見ると、意外と超至近距離に彼がいた。
慌てて腕を掴んでいた手を離す。
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