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あっという間に、エレベーターは3階に到着した。
彼が降りる前に、お礼言わなくちゃ。
「あの!ありがとうございました……腕を貸してくれて。本当に助かりました。じゃあ、お先に失礼します」
笑顔でお礼を言って、扉の閉めるボタンを押そうとしたとき。
彼が閉まりそうな扉を手で止めて、私を見つめてきた。
まっすぐな、鋭い視線で。
「……あんた、どこの部署?名前は?」
「あ……システム部の伊咲絵麻といいます」
「システム部……なるほどね」
妙に何かを納得したように頷く彼。
なんだろう?
「あ……あの、お名前聞いてもいいですか?」
「……俺のこと知らないんだ」
「え?あ……すみません!私自分の部署の人しかほとんど知らなくて」
自分が今までどれだけ会社の人と関わってこなかったかがわかる。
雪ちゃんと他の同期の子とシステム部のオジサン達の顔しか知らない。
今更だけど、そんなんじゃダメだよね。
こういう状況のとき、困るもん。
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