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「営業の鳴海タケル。忘れんなよ」
私を見つめたまま、そっと囁く。
そしてエレベーターの扉を止めていた彼の手が離れて、扉は閉まった。
これが、彼との初めての出会い。
そして今日。
あの日から1度も会うことはなかったのに、ここで2度目の出会い。
「頑張れよ、伊咲さん」
私が苦戦しているのを面白がっているのか、ニヤリと笑みを浮かべて彼は朝から会社を出て行った。
優しい人だと思ってたのに……やっぱり意地悪かも。
「ちょっと……ちょっと絵麻!」
雪ちゃんを見ると、心底驚いた顔で私を見ていた。
「あんた、鳴海さんといつ知り合ったのよ?」
「え……2か月前くらい……でも知り合ったっていうかエレベーターでちょっと一緒になったくらいで」
雪ちゃんの勢いが怖いんですけど。
「あの人が笑ってるとこなんて初めて見たわ」
「え?そうなの?」
そんな笑わない人なのかな?
でもエレベーター乗ったときも、確か何かで笑ってた気がするけど……。
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