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「キミ、人の子?」
その時私に話し掛けてきたのは、白い浴衣姿の同い年位の男の子だった。
綺麗な金色の髪をしたその子は、おもむろに私の手を握ると、
「ボク、キミにするよ」
と言って笑った。
全く意味は分からなかったが、彼に悪意が無い事だけは分かった。
彼は私に焼きそばを買ってくれた。
リンゴ飴も買ってくれた。
いつの間にか鬼も怖くはなくなっていた。
私は彼と遊んだ。
時間を忘れてしまうほど永く永く遊んでいたような気がした。
ふと我に返った時、辺りは既に真っ暗で、
「もう、帰らなくちゃ」
と呟いた私に、彼が右手の人差し指を差し出した。
「指、血が出てる」
「いいんだ」
彼はそう言うと、自分の指から出ている血を私の唇にそっと押し当てた。
口紅をさすように、ゆっくりと輪郭を撫で、
「舐めて」
と促す。
私は言われるがまま、彼の血の付いた唇を舌でペロリと舐めとった。
「少しの間お別れだ。迎えに行くよ」
嗚呼、そうだった。
ようやく……思い出した。
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