アレ

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「なぁ、アレは?」  父がそう言うと、台所で洗い物をしていた母がハッとしたように振り返った。 「あら、ごめんなさい。忘れてたわ」  母はそう言うと、 「梨果ちゃん、アレを持って来て」 と、妹の梨果に声を掛けた。  梨果は「はい」と可愛らしく返事をすると、座っていた椅子から立ち上がり、窓際にいた私の手から『アレ』と呼ばれる果実を持って行った。
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